記事の対象者は以下の方を想定しております。
AIに関連した権利(特許権)は、「アルゴリズム」か「利用発明」かの大きく2つに分けられます。 特許取得は、IBM、google、amazon、Microsoft 等のテックジャイアントが中心である現状があります。 各企業のスタンスの例として、googleは、特許の取得後に速やかに他社利用を牽制するような折衝・訴訟を、積極的に行っているようには全く見受けられません。むしろ社会性を前面に出しプラットフォーマーとしての役割を全うしようとしている姿勢が感じられます。 MicrosoftやAmazon等のAIのメイン事業者においても同様で、現状は訴訟を起こすと他の特許で訴訟を起こされる危惧もあるため、ある種の膠着状態といえるかもしれません。 AI関連特許は黎明期であり、標準となるアーキテクチャーがはっきりした後に、メインとなる不可避な権利(基本特許等)を有する会社が、どのようなスタンスでこの有力技術の采配を行うかが注目されます。 一方、権利行使の現状ですが、AIの特許は権利侵害の立証はなかなかに困難です。 アルゴリズムの特許において、学習過程までプログラムに特定されていれば、立証できる可能性はありますが、学習済みのモデルを採用して処理をしているケースが実装では多いとすると立証は難しいと考えられます。 Googleのアルゴリズム特許の代表例としては以下です。 ・ドロップアウト特許 ・バッチノーマライゼーション特許 ・Seq2Seq特許 ・Transformer特許 上記は代表例ですが、アーキテクチャーや学習アルゴリズムの中核となすような基本特許を取得しております。
実務家が商慣習において注意すべき点としては、これらのアルゴリズム特許について、所有者が利用を許諾しているかの確認は必要であろうと考えられます。 基本的には自社製品が他社の権利侵害をしていないかという点を、アルゴリズムと利用発明の両方の視点でチェックすることが一般的な対処として必要になります。 権利についてですが、特許権で侵害が認められた時には製品の販売の差し止めはもちろんですが、在庫品の譲渡(売買)も制限されてしまいます。 これは資金繰りに大きなインシデントになることは間違いないため、サーバー側ではなく製品側にAIを実装する場合は留意が必要な事項です。 また自社が製品ではなく、ソフトウェアの販売等の無形物であった場合には、なかなか侵害を原告側が立証するに至ることはまれかもしれません。 一方、当然、自社のソフトがヒットし、その処理方法等に将来に渡り、米国企業等の権利所有者が侵害を主張しないことは担保できないため、事前に可能なクリアランスは適切に対処するのはもちろんであります。
利用発明においては、同じ技術であっても異分野への転用で、利用発明の特許が取れる可能性があります。 説明例としては、医療イベント予測特許の例が用いられることが多いです。 例えば、通勤交通量の予測AIのモデルを転用し、上記に応用するといった発想です。 早い段階で出願するためのポイントとして、AIモデルの構築前でも出願できるので、基本コンセプトを早期に出願し、1年以内に国内優先権を主張して内容補充するという考えがあります。 この方法は特許庁の関連するベンチャー向けのセミナー等でも紹介されてます。 特許出願より自社のプレスリリースや顧客提案資料で出願内容を公知にすると、自社が公知にしたものであっても特許として権利化できないため、先に出願を終えておくことが重要です。